図書館史:古代西洋

科目別ノート

ヘレニズム期:王や学派による「知の独占・集積」

①ニネヴェの王室図書館(アッシリア、前7世紀)

最古級の王立図書館。

アッシュール=バニパル王(BC668〜626年)は、王権維持と文書の保存を目的として、全国に古書を求めて筆写させ、内外の粘土板図書の収集に努めた。その数は、楔形文字の粘土板3万枚以上に及ぶ。
20人以上の専門職員が配置され、図書は主題別に分類されていた。王権による体系的な文献管理の原型である。

②リュケイオンの図書館(アテネ、前4世紀)

研究を支える最初期の研究図書館

リュケイオンは、哲学者のアリストテレス(BC384~322年)が設立した学園である。その図書館では書物だけでなく自然標本を体系的に収集しており、共同研究・学術調査の拠点となっていた。

また、アレクサンドロス大王の支援により、資金や標本の充実が図られたとされ、図書館を基盤として研究活動が組織的に行われる先駆的な学術拠点であった。

③アレクサンドリア図書館(エジプト、前3世紀)

古代最大規模の、研究機関+図書館+出版局の一大文化センター。

プトレマイオス1世(BC283頃没)が、哲学者アリストテレスの影響のもとに創設し、学術文化の中心地としてギリシャ文化の保護と発展を目的とした。プトレマイオス2世のもとでは、ギリシャ文献の網羅的収集が構想され、船荷の書物を押収するなど強力な収集政策がとられた。

さらに、カリマコスが『ピナケス』(総合目録)を編纂し、主題別分類による整理が進められた。こうして、単なる収集にとどまらず、翻訳・編集・目録作成などを通じて、文献の保存・研究・生産を担う総合的な学術機関として機能した。

④ペルガモン図書館(小アジア、前3〜2世紀)

アレクサンドリアに次ぐヘレニズム学術都市

アッタロス朝ユーメネス2世(BC195~158年)が創設し、王の威信を示す学術都市として、アレクサンドリア図書館に対抗して発展した。書物収集をめぐる競争の中で、パピルスの入手が困難であったため、これに代わって羊皮紙が書写材料として普及した。

羊皮紙は高価である一方、耐久性に優れ冊子形式にも適しており、後の中世写本文化の展開につながる素材となった。

ローマ期:国家・都市による「知の公開・制度化」

ヘレニズム期の知の集積は、ローマにおいては市民へと開かれていく。

⑤アシニウス・ポリオの図書館(ローマ、前1世紀)

ローマ最初の公共図書館

当時、ローマ市民の間で書物愛好が広まり、貴族や富豪の邸宅には蔵書を備えた個人図書館が普及していた。こうした中で博学者と評価される者も現れ、教育の普及とあいまって読書への関心が高まり、公共図書館を受け入れる社会的・文化的基盤が形成されつつあった。

こうした状況のもと、ガイウス・ユリウス・カエサルがアレクサンドリアでの経験などを背景に、ローマ市民の教養向上を目的として公共図書館の建設を計画したとされる。カエサルの死後BC39年に、ローマの政治家アシニウス・ポリオ(BC76~AD5)がこれを実現し、一般市民に公開した。

蔵書は、ギリシア諸都市への遠征で得た戦利品をもとに、図書やヘレニズム美術品によって構成された。

こうして、市民に開かれた知の施設として、公共図書館の原型がローマに成立した。

⑥ウルピア図書館(ローマ帝国、2世紀)

帝政ローマの代表的官立図書館

ローマ皇帝 トラヤヌス(52〜117)によって、トラヤヌスのフォルム内に建設され、市民のための公共施設の一翼を担っていた。

ギリシア文庫とラテン文庫を併設するなど体系的な構成をもち、ローマ文化の中で重要な役割を果たした。国家管理の図書館として古文書館的機能も備え、帝政期における公共図書館の制度化を示す代表例である。

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